ニュース

弁護士池田千絵が「テレワークにおける労務管理」について投稿しました

2020年7月17日

新型コロナウイルス感染症対策のために急激にテレワークが進み、期せずして、働き方改革が実践されつつあると感じている方も多いかと思います。

そこで問題となるのが、これまでと決定的に違う勤務形態、お互いが「見えない」環境での勤務について、どのように労務管理を実施したらよいのかということです。素朴な懸念として、勤務時間中にサボっていないか?反対に時間外勤務し過ぎていないか?どちらも気を付けなければならないことであり、悩ましいところです。

しかしながら、テレワークには、移動時間を削り業務効率化が図れる、育児や介護等との両立を図るワーク・ライフ・バランスに資する、結果的に有為人材が確保できるなどの利点があることは確かであり、上手に活用する仕組みを確立することができれば、事業運営に大きなメリットをもたらすことも事実です。

厚生労働省は、「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」において、テレワーク下での労働時間、長時間労働、自宅での環境整備等のポイントにおける留意点を示していますので、参考にいくつか要点をご紹介します。

 
1. テレワークでも労働基準関係法令の適用を受けること

まず、大前提として、テレワークの場合であっても、労働基準法、労働安全衛生法等の労働基準関係法令を遵守しなければなりません。従って、例えば、「労働条件の明示」として、就業場所はどこにするか(自宅、サテライトオフィス、使用者が許可する場所等)を明示すること等が必要です。

 
2. 労働時間の把握

テレワークの場合には使用者が現認するとかタイムカードということは難しいため、自己申告、パソコンの使用時間等で管理することとなります。なお、通勤の移動時間中に情報通信機器を用いて業務を行うことは物理的に可能ですが、これらの時間について、使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われたものは労働時間に該当します。

 
3. 休憩時間や中抜けについて

労働基準法34条2項では原則として休憩時間を労働者に一斉付与することとされていますが、テレワークを行う労働者については、労使協定を結ぶことにより、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能とされています。

また、テレワーク実施予定の労働者が、使用者に対し、いわゆる中抜けとして、銀行等の私用のために休憩時間を1時間延長して終業時刻を1時間繰り下げたいと要請した場合、使用者が、終業時刻の繰り下げがあり得る旨の就業規則に基づき、要請を認め、

終業時刻繰り下げという所定労働時間の変更を行うことも可能です。

 
4. 長時間労働の抑制

テレワークによって労働実態が見えにくくなると、使用者が明確に認識しない状況下でも、物理的には作業が可能なために、労働者が業務を遂行せざるを得なくなり、結果的に長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。

これについては、役職者から時間外・休日・深夜にメール送信することを自粛、時間帯によりシステムへのアクセスを制限、テレワーク下での時間外・休日・深夜労働原則禁止とする等の対策例が紹介されています。

 
5. 自宅等でのテレワーク環境整備

自宅等でテレワークさせる場合、使用者は、事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則及び情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインの衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましいとされています。

安定した椅子や室温17~28度に保つ空調、操作しやすいマウス等が環境整備の例として挙げられています。なお、自宅でテレワーク中に作業用パソコン前の椅子に座ろうとして転倒してケガをした場合等は、「業務上の災害」として労災保険給付の対象になるとされています。

 
~雑感~

最近、富士通が通勤定期券代の支給を止めて、テレワークのための補助金として月額5000円を一律支給することを公表していましたが、通信費、プリンターのインク代や用紙代等、これを使用者が負担するのか、労働者に負担させるのか、確認が必要です。使用者の業務命令によってテレワークとするなら、これによって生じる経費は、通常、使用者が負担すべきものと言えます。労働者に負担させるなら就業規則の変更が必要な場合も出てくるかと思います。

 
テレワークという新しい働き方を導入し、試行錯誤を繰り返しているところだと思いますが、労使ともにメリットを享受できるような仕組みが確立できるよう、是非、参考にしていただければと思います。

 
(文責 弁護士 池田 千絵)

ページのトップへ