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弁護士中島有紀が「東京オリンピックチケットの転売は違法!?」を投稿しました

2019年5月31日

1 はじめに

2019年5月9日より,東京オリンピックのチケットの抽選受付がはじまりました。56年ぶりの東京オリンピック,楽しみですね。

さて,東京オリンピックのチケットの申込みや購入において,注意しておきたいのが,「特定興行入場券の不正転売禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(以下,「チケット不正転売禁止法」といいます。)です。2019年6月14日より施行されます。この法律が施行される前のチケット不正転売に対しては,迷惑行為禁止条例違反や古物営業法違反などで取り締まりを行っていました。インターネット上での売買は,迷惑行為禁止条例で取り締まることの出来る「公共の場所又は公共の乗り物」での売買に該当せず,同条例違反による取り締まりができませんでしたし,古物営業法違反は,営業として行われている場合に限られ,自己使用のために買ったものを転売する場合は規制の対象になりませんのでどこからが営業か曖昧で,十分な取り締まりができない状態でした。そこで,ダフ屋行為やインターネット上でのチケットの不当な高額転売等を禁止するために,チケット不正転売禁止法が制定されたのです。今回は,このチケット不正転売禁止法について簡単な解説をしたいと思います。

 
2 チケット不正転売禁止法の対象となるチケットとは?

チケット不正転売禁止法は,国内で行われる映画,音楽,舞踊などの芸術・芸能やスポーツイベントなどのチケットのうち,興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨明示された座席指定等がされたチケット(「特定興行入場券」)の不正転売等を禁止しています。

ここで,不正転売等が禁止される「特定興行入場券」とは,興行入場券(それを提示することにより興行を行う場所に入場することができる証票)であって,不特定又は多数の者に販売され,かつ,

① 興行主等が,販売時に,興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し,かつ,その旨を当該入場券の券面等に表示し

② 興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定され

③ 興行主等が,販売時に,入場資格者又は購入者の氏名及び連絡先を確認する措置を講じ,かつ,その旨を当該入場券の券面等に表示している

ものをいいます(法2条参照)。

ですから,招待券などの無料で配布されたチケット,転売を禁止する旨の記載がないチケット,販売時に入場資格者又は購入者の氏名及び連絡先の確認が行われていないチケットなどは,「特定興行入場券」にはあたりませんので,チケット不正転売禁止法の対象にはなりません。
 

3 チケット不正転売禁止法が禁止する行為とは?

チケット不正転売禁止法は,特定興行入場券の不正転売と特定興行入場券の不正転売

を目的とした特定興行入場券の譲受けを禁止しています。

そして,「特定興行入場券の不正転売」とは,興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって,興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいいます(法2条4項)。

「業として行う」必要があるので,業者に限られるように思われるかもしれませんが,業者だけでなく個人であっても,反復継続の意思をもっていれば,これにあたります。

 
4 違反した場合は?

特定興行入場券の不正転売等を行い,チケット不正転売禁止法に違反してしまった場合,違反者は1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はその両方(法9条)が科されます。

 
5 最後に

東京オリンピックのチケットは,チケット不正転売禁止法の対象となる「特定興行入場券」にあたりますので,その不正転売等は刑事罰の対象となります。

非正規の業者などからの「東京オリンピックのチケットが手に入るよ」という甘い誘いは,詐欺の可能性が高いので,ご注意下さい。

(文責 弁護士 中島有紀)

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