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弁護士黒澤昌輝が【仮想通貨も適用対象となる外為法とは】を投稿しました

2018年8月6日

【仮想通貨も適用対象となる外為法とは】
 
1 はじめに
財務省は,平成30年5月18日,仮想通貨に関する「外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」といいます。「がいためほう」と読みます。)」に基づき,日本と外国との間又は居住者と非居住者との間で3,000万円相当額を超える支払又は支払の受領(以下「支払等」といいます。)をした場合には,財務大臣への報告が必要である旨の報道発表を行いました。つまり,仮想通貨を介しての取引についても法定通貨での取引と同様に外為法の規制が適用されることになります。
本コラムでは,金融機関関係者以外にはあまりなじみのない外為法の概要について,ご説明したいと思います。
 
2 外為法とは
外為法は,対外取引の正常な発展,我が国や国際社会の平和・安全の維持などを目的に外国為替や外国貿易などの対外取引の管理や調整を行うための法律です。
外為法は,元々,1930年代の国際金融恐慌をきっかけに制定され,円通貨の防衛を目的とする資本逃避防止法に由来するものでした。
現在の外為法では,その後の度重なる改正により,対外取引の大幅な自由化が図られ,外国為替や外国貿易などの対外取引が自由に行われることを基本として,国防,マネー・ローンダリング防止,テロ対策等の観点から,管理又は調整につき必要最小限の規制を行うこととなっています。
 
3 外為法の取引規制
⑴ 外為法上の管理・調整について
  外為法では,特定の対外取引に対し必要最小限の管理・調整の対象となります。
 ア まず,外為法上,管理の方法として,一定の発動要件の下,対外取引や支払等を行う前に,主務大臣の許可や承認を得ることが義務付けられています。
   例えば,支払等につき,主務大臣の許可を受けることを義務づけるためには,「我が国が締結した,条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき」(国際連合安全保障理事会決議に基づく制裁)という発動要件があります。この場合,許可を受けないまま取引を行った者には罰則の適用があるため,国際連合安全保障理事会決議により禁止された活動等に関与する者には資産凍結等の経済制裁措置が講じられることになります。
   なお,経済制裁に係る支払等が仮想通貨で行われる場合も,同法上の許可が必要となります。
 イ 一方,調整については,居住者や外国投資家が特定の対外取引を行おうとする場合に,主務大臣や事業所管大臣が当該取引の内容等について,「日本の経済(産業)運営に悪影響をおよぼすおそれ」がないかどうか,また「国際平和を損なうおそれ」がないかどうか,あらかじめ審査する必要があるため,事前に取引の内容等を届出させることを義務付けています。
⑵ 事後報告
 また,外為法では,統計の作成や対外取引の実態把握を目的として,それぞれ取引の内容に応じて,対外取引の当事者に対して,取引に関する報告,支払等に関する報告及び個別の業務等に関する報告の報告書の提出(事後報告)を義務付けています。 
 財務省によると,財務大臣への支払等に関する報告が必要となる仮想通貨に関する取引の主な事例として,その対価が3000万円相当額を超えるもののうち,仮想通貨を売買する取引であって、当該取引に関して支払または支払の受領が法定通貨または仮想通貨で行われたもの,仮想通貨を交換する取引、仮想通貨を移転する取引等が挙げられます。
 
4 外為法の適用範囲
 外為法は,支払等につき,許可を要する場合や事後報告が必要となる場合として, ①日本から外国へ向けた支払をしようとする場合(国内⇒外国),②居住者・非居住者間で支払等をしようとする場合(居住者⇔非居住者)を定めています。
 この「居住者」とは,日本国内に住所又は居所を有する個人及び日本国内に主たる事務所を有する法人その他の団体をいいます。なお,居住性の判定基準の詳細は,「外国為替法令の解釈及び運用について」(昭和55年11月29日付蔵国第4672号)に定められています。
 
5 外為法に基づく本人確認
 外国為替業務を行う金融機関は,外為法に基づく資産凍結等の措置の実効性を確保するために,顧客等の「本人特定事項」を確認する必要があります。
 なお,外為法に基づく本人確認の方法や本人確認書類の範囲は,マネー・ローンダリングやテロ資金供与防止の目的とする,犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」)に基づく取引時確認における顧客等の本人特定事項の確認の場合と同じです。そのため,外為法に基づく本人確認の対象取引について,犯収法に基づく取引時確認を行えば,外為法に基づく本人確認も履行したことになります。
前回コラムである【ざっくりわかる犯罪収益移転防止法における取引時確認】をご参照下さい。
 
                                                     以上
 
 
(文責 弁護士 黒澤昌輝)

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