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弁護士 池田千絵「学校で起きる法律問題 スクールロイヤーの活用」を投稿しました

2017年12月26日

「学校で起きる法律問題 スクールロイヤーの活用」

 

スクールロイヤーとは?

スクールロイヤーという言葉をご存知でしょうか。

簡単に言えば、

「学校における諸課題の効率的な解決に資するため、学校の専門スタッフとして学校を支援する弁護士」のことを指します。

スクールロイヤーには、法的責任論や裁判例を踏まえ、学校内で行われるいじめ予防教育について授業モデルを構築する、あるいは教材を開発するといった教育補助的な役割や、学校が抱える法的問題について、学校への助言、教職員向けの研修を行うこと等が期待されています。

制度としては、まだ実験的な試みの段階で、学校が内部に弁護士を抱える例は少ないのが現状ですが、文部科学省は、平成30年度の概算要求主要事項として、スクールロイヤー活用に関する調査研究のため、前年度5000万円増の5300万円を計上しました。

 

なぜスクールロイヤーが必要か?

では、なぜ、今、学校に弁護士が必要であるということが、注目されるようになったのでしょうか。

昨今、学校を取り巻く環境は大きな変革期に突入しています。

18歳人口はこの数年横ばい傾向でしたが、今後6年間で10万人減少すると言われており、来年は、いわゆる「2018年問題」として取り上げられているように、再び18歳人口の急速な減少が始まります。

このような状況下において、教育現場は、更なる「教育の質の向上」を図り、各学校の魅力を最大限にアピールしていく必要があります。

 

学校が教育の質の向上に専念するためには、学校の基盤がしっかりと固まっていることが必要であり、学校がいかにして、制度的な「ガバナンス強化」・「経営力の強化」を確立することができるかということになろうかと思います。学校の経営力を強化する手法は様々ですが、その1つとして着眼すべきは、やはり、学校の一番の要として、学校を支える「教職員」の在り方です。

学校の教職員の業務過多の問題が非常にクローズアップされるようになりましたが、これからは、校務の効率化・負担軽減を図り、教職員が「教育の質の向上」にどれだけ専念できるかが重要になってくると思います。そこで考えられるのが、学校で生じる全ての問題を教職員だけで解決するのではなく、「チームとしての学校」が、専門スタッフを有効に機能させ、問題を解決するという手法です。

 

学校で起きる法律問題は多種多様!

学校では、いじめ、体罰、学校事故、ハラスメントを始め、保護者との関係や近隣住民との関係など、多種多様な法律問題が発生します。これに対し、教職員と連携した専門スタッフとしてのスクールロイヤーが機能することで、コンプライアンスに配慮した適切な対応と教職員の校務の効率化・負担軽減が実現するわけです。特に「いじめ」は、教育新聞が発表した平成28年度問題行動等調査結果によれば「認知最多の32万件」という驚愕の件数を記録しています。

ただ、「チームとしての学校」に参画するスクールロイヤーは、単に法律の専門家としての一般的な知識・経験があれば十分ということではなく、学校という「教育現場」で起きた問題であることを配慮した上での問題解決能力があることが求められるものだと思います。当事務所でも、長年、学校法務に携わってきた経験から、学校で必要とされる「感覚」を持って、スクールロイヤーに期待されるような役割を果たしてきました。特に学生・生徒、保護者との関係では、このような「感覚」に基づいた視点も必要だと思います。

そして、労務管理、諸規則の整備、授業料・学費の管理、校務分掌、学校会計等の学校の日常的なマネジメントの場面においても、学校の実態をよく理解した上での仕組み作り・参画が不可欠です。

今後、スクールロイヤー等の専門家が関わることで、学校が新たな発展を遂げることを期待しています。

(文責:弁護士 池田 千絵)

 

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いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究

(文部科学省初等中等教育局の「平成30年度概算要求主要事項」より抜粋)

【背景】

・国は、困難な問題の解決に向けて相談できる弁護士等、多様な人材による支援体制を構築する【いじめ問題等への対応について(第一次提言)(平成25年2月26日教育再生実行会議決定)】

・いじめの防止のためには、いじめに向かわない態度・能力の育成が喫緊の課題である。発達の段階に応じて、児童生徒がいじめの問題を自分のこととして捉え、考え、議論することにより、正面から向き合うことができるよう、実践的な取組を行う必要がある。

 

【概要】

法律の専門家である弁護士が、その専門的知識・経験に基づき、学校において法的側面からのいじめ予防教育を行うとともに、いじめなどの諸課題の効率的な解決にも資する、学校における相談体制の整備に関する調査研究を実施する。

 

弁護士が、実例(裁判例等)を示しながら、人権を守ることの重要性やいじめの法律上の扱い(刑事罰の対象となり得ることや、不法行為に該当し損害賠償責任が発生し得ること等)について教える授業モデルの構築や実践的な教材の開発を行う。

 

学校が、児童生徒を取り巻く問題について弁護士に相談し法的アドバイスを受けることや、弁護士により教員向けの研修会を受けること等が、生徒指導上の諸課題の効率的な解決に資することについて検証を行う。

 

学校において、いじめ防止対策推進法等に基づいて、いじめ問題への対応が徹底されているかを弁護士が法的側面から確認することの有効性を検証する。

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