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新型コロナウイルスに関連する 私立学校の法律問題 Q&A

2020年5月31日

新型コロナウイルスに関連する私立学校の法律問題 Q&A
1.教職員等を休業させる場合
Q1:新型コロナウイルスに関連して,教職員を休業させる場合,給与等の支払いはどのようにすればよいでしょうか?
 

 教職員を休業させる場合,労働基準法第26条では,「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合には,使用者は,休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
 

 この「使用者の責めに帰すべき事由」とは,使用者側に故意又は過失がある場合のみならず,天災地変等の不可抗力以外の事情による休業を広く含むものと解されています。ここでいう「不可抗力」とは,以下の①,②の要件をいずれも満たすものと解されています。
①その原因が事業の外部より発生した事故であること,
事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
 

 よって,使用者は不可抗力による休業の場合を除き,休業手当を支払う必要があります。例えば,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,学校が自主的に休校したような場合は,原則として休業手当の支払い義務があります。
 

 なお,就業規則等により各学校において,100分の60を超えて支払うことを定めることは問題ありません。このような対応を行った場合,減収等一定の要件を満たせば,雇用調整助成金の支給対象となる場合があります。

 
 

Q2:休業手当は,専任の教職員のみならず,非常勤講師,パート職員,アルバイト等の非正規労働者に対しても,同様に支払う義務があるのでしょうか

 上記の非正規労働者も労働基準法第26条の「労働者」に該当しますので,同様に休業手当の支払い義務があります。

 
 

Q3:新型インフルエンザ特措法による都道府県知事の休業要請を受けて,教職員を休業させた場合にも,休業手当を支払う必要があるのでしょうか?

 「不可抗力」による休業の場合,使用者は休業手当休業手当を支払う必要はありません。
 
           
 もっとも,都道府県知事の休校要請から,一律に「不可抗力」による休業が認められるわけではないので,注意を要します。ここでいう「不可抗力」とは,以下の①,②の要件をいずれも満たすものと解されています。
 ①その原因が事業の外部より発生した事故であること,
 ②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
 

 まず,今回の新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,新型インフルエンザ特措法に基づく休業要請がなされたような場合,①の要件は満たします。
 

 もっとも,②の要件を満たすためには,学校が使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。例えば,自宅で教職員に課題作成,オンライン授業の準備等の業務を命じることが可能な場合や,他に従事させることができる業務が存在するにもかかわらず,一律に全教職員に休業を命じた場合には,②の要件を満たさないものと判断されます。
 

 なお,法律上は休業手当の支払いが不要な場合であっても,休業による労働者の不利益を回避するため,労使間の協議及び就業規則の定め等により,休業手当相当額を支払うことは可能です。この場合も,減収等一定の要件を満たせば,雇用調整助成金の支給対象となる場合があります。

 
 

Q4:新型コロナウイルスに感染した教職員を休業させる場合にも,休業手当を支払う必要があるのでしょうか?

 都道府県知事による就業制限により休業させる場合,学校の「責めに帰すべき事由」による休業とはいえませんので,休業手当を支払う必要はありません。
 

 なお,私学共済の加入者が新型コロナウイルス感染症による療養のために学校等を休み,事業主から報酬が受けられない場合,傷病手当金が支給されます。ただし,事業所内に感染者が発生したことによる事業所全体の休業や,近親者の感染に伴う本人の判断による休暇取得については傷病手当金の支給対象となりません。詳細は,日本私立学校振興・共済事業団のHPをご参照下さい。
https://www.shigakukyosai.jp/corona/corona_02.html

 
 

Q5:新型コロナウイルスに感染した疑いのある教職員を休業させる場合には,休業手当を支払う必要があるのでしょうか?

 職務の継続が可能である教職員に,使用者の自主的な判断で休業させる場合には,原則として不可抗力による休業とはいえないため,休業手当を支払う必要があるものと考えられれます。
 

 もっとも,帰国者・接触者相談センターへの問い合わせが呼びかけられているような状態であれば,感染が合理的に疑われるような状況にあり,「職務の継続が可能」とは言えないので,使用者の自主的判断による休業と評価すべきでないから,休業させても休業手当を支払う必要はないとの解釈も可能です(五三智仁「従業員の労務管理等Q&A」NBL1166号15頁)。なお,2020年5月30日時点の内閣府のHPでは,以下の場合に相談を呼び掛けています。
・息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
・高齢者、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など))がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
・上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)
 

 このように休業手当を法律上支払う必要がないと判断される場合であっても,学校が休業手当相当額を支払うことは可能です。この場合も,減収等一定の要件を満たせば,雇用調整助成金の支給対象となる場合があります。
 
 

2.派遣労働者を休業させる場合
Q6:新型コロナウイルスに関連して,派遣労働者を休業させる場合,派遣労働者にも休業手当を支払う必要があるのでしょうか?

 派遣労働者の使用者は派遣会社であるため,学校は労働基準法第26条の休業手当を支払う義務を負いません。
 

 もっとも,学校は派遣会社と派遣契約を結んでいるため,派遣料を支払う義務を負うか否かは,具体的な派遣契約の定めに従うことになります。
 

 一般的には「派遣先の責めに帰すべき事由」による休業の場合,派遣先は派遣料全額の支払い義務を負う旨定める旨の条項が想定されます。ここでいう「責めに帰すべき事由」とは,派遣先の故意・過失及び信義則上これと同視すべき事由による休業と解されます。
 

 まず,都道府県知事の休校要請を受けていない段階での,学校の自主的な判断による休業の場合,原則として「責めに帰すべき事由」があり,派遣料全額の支払い義務を負うことになるものと思われます。
 

 これに対し,都道府県知事の休校要請に基づく休業の場合,在宅勤務で派遣労働者に業務を行わせることが可能か否かを検討する等,休業を回避すべき具体的な努力を尽くした上で,休業させる場合には,「責めに帰すべき事由」があるとはいえず,学校は派遣料を支払う義務は負わないことになるものと思われます。
 

この場合でも,派遣会社は派遣労働者に休業手当を支払う義務を負う可能性がありますが,派遣会社は,減収等一定の要件を満たせば,雇用調整助成金を受給することが可能です。
 
 

Q7:新型インフルエンザ特別措置法に基づき,都道府県知事からの休業要請を受けて,学校が労働者派遣契約を中途解除せざるをえない場合でも,学校は,労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる必要はありますか。

 労働者派遣法第29条の2は,派遣先の「都合による労働者派遣契約の解除」に際しては,派遣先に対し,新たな就業先の確保や派遣会社が派遣労働者に支払う休業手当の費用等の損害を賠償する義務を定めています。
 

 この点,派遣先の「都合」とは,派遣先の「責めに帰すべき事由」と同義だとすれば,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,都道府県知事の休業要請により休校せざるを得ず,休業を回避すべき具体的な努力を尽くした上で,派遣労働者に行わせる業務が存在しない場合,派遣先である学校の「責めに帰すべき事由」は存在しないと解することも可能です。
 

 しかし,厚生労働省が公表した「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(労働者派遣について)」によれば,派遣先の都合によるかどうかについては,個別の事例ごとに判断されるものであり,改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で,都道府県知事から施設の使用制限や停止等の要請・指示等を受けて派遣先において事業を休止したことに伴い,労働者派遣契約を中途解除する場合であっても,一律に労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる義務がなくなるものではない,また,労働者派遣契約の中途解除が派遣先の都合によらないものであっても,派遣先は,派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることが必要であると解説されているため,注意を要します。
https://www.mhlw.go.jp/content/000622039.pdf
 

 よって,学校としては,新たな就業機会を確保するよう努め,それができない場合には,個別の事情に応じて,派遣労働者の休業費用等の負担割合について,派遣会社と協議を行うのが無難な対応と思われます。
 
 

Q8:労働者派遣契約を中途解除した場合に,派遣会社が休業手当支払いを行い,雇用調整助成金を受給する場合であっても,派遣先は労働者派遣法第 29 条の2に基づき,派遣元事業主に対して休業手当等の費用負担を行わなければならないですか。

 この点,厚生労働省が公表している「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(労働者派遣について)」の問2によれば,「派遣元事業主が雇用調整助成金の支給を受けた場合であっても,派遣先において労働者派遣法第 29 条の2に基づく措置を講ずる必要がなくなるものではありません。そのような場合の派遣先としての休業手当分の費用負担額については,労働者派遣契約等に基づき,派遣元事業主との派遣先との間でよく話し合ってください。」と解説されています。https://www.mhlw.go.jp/content/000629738.pdf
 

 しかし,派遣会社が学校から休業手当相当額の費用の支払いを受けた上に,休業手当の8~9割に相当する雇用調整助成金の支給を受けることができるとすると,派遣会社に二重の利得を許すことになり,学校との関係で極めて不公平な状況を招くことになります。
 

 そもそも,派遣法第29条の2が,派遣先の都合による解除の場合,「休業手当等の支払に要する費用」等を負担する義務を定めた趣旨は,派遣先の都合により生じた派遣元の損害を賠償する点にあります。そうであれば,派遣会社が派遣先から休業手当の支払いを受けた上で,当該休業手当を補填する性質の雇用調整助成金の支給を受けた場合には,同助成金の支給額に相当する損害は消滅しており,派遣先に対し,不当利得(民法703条,704条)として返還する義務を負うと解釈することも可能です。
 

 そこで,学校としては,派遣会社が雇用調整助成金を受給する場合には,あらかじめ休業手当と雇用調整助成金の差額のみ負担する旨の交渉を行い,又は,休業手当相当額を一旦支払った上で,派遣会社が雇用調整助成金を受給した後で,助成金相当額の返還を求める交渉を行うことが考えられます。
 
 

3.オンライン授業と著作権
Q9:新型コロナウイルスの感染拡大のため,当面はオンラインで授業等を行うことにしましたが,教材等の著作物をインターネットで送信することは,著作権法上問題がありますでしょうか?

 
 オンラインでの指導の際に著作物をインターネットで送信する場合には,原則として 著作権者の許諾を得る必要がありますが,平成30年の著作権法改正により,改正法第35条により,学校の設置者が一括して指定管理団体に補償金を支払うことで,個別の許諾を要することなく,オンライン授業等に教材を利用することができる制度(授業目的公衆送信補償金制度)が創設されました。
 この制度は,新型コロナウイルス感染症に伴う緊急的な対応として,当初の予定を早めえ令和2年4月28日に施行され,また,令和2年度に限って補償金額を特例的に無償とすることが決定されています。具体的には,学校の設置者は,一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(略称:SARTRAS)に届出をすることにより,4月28日以降,予習・復習・自宅学習用の教材をメールで送信することや,リアルタイムでのオンライン指導やオンデマンドの授業において,講義映像や資料をインターネットで児童生徒等に限って送信することなどが可能となります。
 ただし,例えば,学校での購入が想定されるドリル・ワークブックをそのまま送信する など,著作権者の利益を不当に害する行為は認められませんので,御注意下さい。令和 2 年度における具体的な運用指針(ガイドライン)については,改正著作権法第35条運用指針(令和 2(2020)年度版)をご参照下さい。
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin2020.pdf
 
 

Q10:授業目的公衆送信補償金制度は,私立学校や,いわゆる「一条校」ではない学校・施設も対象になるのでしょうか?

 著作権法第35条第1項は「学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)」と規定していますので,私立学校や,いわゆる「一条校」ではない専修学校・各種学校,社会教育施設なども広く対象となります。ただし,専修学校・各種学校としての認可を受けていない予備校・ 塾など,営利目的と評価される施設は対象外です。詳細については,令和2年度版 運用指針を御参照下さい。
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin2020.pdf
 
 

Q11:誰もが見られるウェブサイト上に,教材や授業動画をアップロードすることはで きますか。また,学校間で教材の共有をすることはできますか?

 著作権法第35条1項が認めているのは,あくまで「授業の過程」における「必要な限度」での著作物利用ですので,権利者から許諾を得ない限り,授業を受ける児童生徒等に限定して配信する必要が あります。よって,誰もが見られるウェブサイト上にアップロードすることはできませ ん。なお,例えば,YouTubeを活用する場合,「非公開」や「限定公開」とい う設定を行うことによって受信者を限定することができます。
 
 

Q12:「授業の過程における利用」が対象ということですが,教育課程内の活動に限定 されるのでしょうか。また,予習・復習は対象となりますか?

 「授業」とは,学校その他の教育機関の責任において,その管理下で教育を担任する者が学習者に対して実 施する教育活動を意味します。そのため,学校等の管理下で責任を持って行われる教育活動であれば,教育課程外の活動(例: 部活動,補習,生徒会活動,学校行事等)を含めて,制度の対象となります。また,授業の予習・復習の際の利用 も対象となります。 詳細については,令和2年度版運用指針を御参照下さい。
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin2020.pdf
 
 

4.学校の責任について
Q13:再開された学校で,児童・生徒・学生が,新型コロナウイルスに罹患し,重大な被害が出た場合,学校が保護者から損害賠償を請求されることはありますか。

学校は,児童生徒等に対し安全配慮義務を負担していますから,学校側に安全配慮義務違反があり,この義務違反と児童生徒等らの罹患による損害との間に因果関係があれば,理論上,学校設置者に損害賠償責任が発生します。
学校における感染症の罹患に関し,学校側の責任が認められたものとしては,学校給食による集団食中毒によりO157感染症に罹患した児童が敗血症により死亡したケースが挙げられます。この裁判では,学校給食の実施管理に従事する職員に過失があったとして,国家賠償法1条により給食を提供した自治体の責任が認められました(大阪地裁堺支部平成11年9月10日)。本件は,公立小学校で発生した事件であったため,国家賠償法が適用されましたが,私立学校における安全配慮義務違反を検討するうえでも,大変参考になります。
 
 

Q14:どのような場合に,学校は損害賠償責任を負担することになるのでしょうか。

文科省のHPなどで示される学校の運営方法を順守していなかった場合,安全配慮義務違反が認定される可能性があります。
 

前述の裁判で,自治体側は,カイワレ大根によりO157による集団食中毒が発生し多数の児童が死傷するなどの事故が発生することを予見することはできなかったなどと主張しましたが,裁判所は,学校給食制度の概要,堺市における学校給食の実施状況,O157の発生状況や性質,感染対策に関する新聞報道,堺市や他市町村の食中毒に対する対応,厚生省(当時),大阪府及び堺市の調査結果,被害児童の死亡原因などを踏まえ,被害児童がO157に汚染された学校給食を喫食した結果O157感染症に罹患し死亡したと認定しました。
 

この認定を踏まえ,裁判所は,学校給食が学校教育の一環として行われていることや,児童側にはこれを食べない自由や献立選択の自由もないこと,調理も学校側に全面的に委ねられていること,学校給食に瑕疵等があれば直ちに生命・身体に影響を与える可能性があること,学校給食を喫食する児童が抵抗力の弱い若年者であることなどから,学校給食の安全性の瑕疵によって,食中毒を始めとする事故が起きれば,結果的に,給食提供者の過失が強く推定されるとしました。
そして,O157は加熱により容易に死滅する性質であるから献立を加熱調理に切り替えていれば除菌できた蓋然性が極めて高いこと,国や大阪府の通達類によれば,O157によって食肉以外の食品が汚染される可能性が十分に考えられたこと,食材について加熱処理の有効性・必要性が繰り返し指摘されていたこと,他の多くの市町村は,給食の献立を加熱処理に切り替えていたこともあり,前述の「過失の推定」は覆らず,裁判所は,原因食材の特定,感染ルートの特定ができなかったとしても,何ら変ることなく,国家賠償法における過失があるものといわなければならないと判断し,損害賠償責任を肯定しました。
 

この裁判で裁判所は,当時の国や大阪府の通達,他の市町村の対応に言及するなど,安全配慮義務違反を判断するにあたり,学校側が,当時の知見に基づいた感染症対策を講じていたか否かを基準としています。
新型コロナウイルスに関してはまだまだ未知の部分が多く,感染の形態もO157とは異なっていますが,感染症に対する対策という点では共通しており,この判断基準は有用です。
従って,学校は,以下で紹介する文科省のHP等に記載されている最新の知見に基づく対応策を参考に,感染症対策を講じる必要があります。
 
 

5.学校再開の場合の留意点
Q15:授業再開後,運営上どのような点に注意すればいいでしょうか。

再開後の学校の運営について,留意点は多々あります。
 

文科省のHPや都道府県,教育委員会のHP等では,三密を避ける,新しい生活様式を取り入れるといった基本方針のほか,登校時,授業時,給食時など,いろいろな場面での留意点が,細かく指摘されていますので,そちらを確認してください。
 

また,文科省は,HPで,今年3月24日に「学校再開ガイドライン」,「教育活動の再開などに関するQ&A」,5月1日には「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業にかかる学校運営上の工夫について」を公開したのち,5月22日には「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」(https://www.mext.go.jp/content/20200522_mxt_kouhou02_mext_00029_01.pdf) を公開しています。新型コロナウイルスについては未知の部分が多いので,信頼できる新しい知見に基づく情報を取得するよう心掛ける必要があります。
 
 

Q16:年少者については重症割合は小さいと言われていますし,学校でクラスターが発生したという話も聞いたことがありませんが,年少者を対象とする学校でも,やはり文科省のいうような対策を講じたほうがいいのでしょうか。
年少者を対象とする学校でも対策を講じる必要があります。
 

国内では,3月初めから全国一斉に臨時休校となったこともあり,いまのところ,学校でのクラスター発生の報告はなく,年少者に関しては重症割合が小さいと言われていますが,今後の状況を予測するのは難しい状況にあります。
 

従って,年少者を対象とする学校も,文科省等のHP等を踏まえた対策を講じる必要があります。
 
 

Q17:当校のある県は,感染者数は大変少ないです。そのような地域でも,感染症対策が必要でしょうか。
必要です。感染者数ゼロが続いていた地域で,その後クラスターが生じたケースもあります。
 

したがって,感染症対策を講じる必要がありますが,次項を参照して,地域に応じた対応を確認してください。
 
 

Q18:感染者数が少ない地域でも,感染者数が多い都道府県と同じ対応を取る必要がありますか。

どのような対応を取るかは,児童生徒,教職員等の生活圏の感染状況を踏まえて対応することになります。
 

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態措置は都道府県単位で行われますが,より適切な対応を行うべく,5月14日,新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は感染レベルに応じた地域区分を提言しました。前述の文科省のHPでも,この地域区分を引用して,地域ごとの行動基準を示しています。
 

もっとも,感染レベルは今後変化する可能性がありますから,現在の地域区分を確認すると同時に,他の地域区分の行動基準もよく確認し,地域区分が変わった際は,すぐ対応できるようにする必要があります。
 
 

Q19:重症化リスクが高い子供がいる可能性があり心配です。どうすればいいでしょうか。

医療的ケアが必要な児童生徒,あるいは,基礎疾患がある生徒は,重症化リスクが高い場合があります。文科省のHPでは,保護者から主治医の見解を報告してもらうよう記載されています。該当児童生徒等について学校が適切に対応できるよう,学校から児童生徒等の保護者に対して,重症化リスクが高いとみられる場合は,あらかじめ学校に対し主治医の見解を報告するよう書面で促しておくことをお勧めします。
 
 

Q20:学校再開後,児童生徒が感染した場合,学校には何か通知があるのでしょうか。

児童生徒等が感染した場合,医療機関から,直接学校に連絡があるわけではありません。感染の連絡は,保護者あるいは本人から,学校になされます。
 

従って,保護者あるいは本人が速やかに連絡しないと,学校は情報を得ることができません。場合によっては,保険所から濃厚接触者の調査が行われるまでわからないという可能性もあります。感染拡大を防ぐためにも,感染がわかったら,速やかに学校に伝えるよう,あらかじめ児童生徒や保護者に周知することをお勧めします。
 
 

 
6.授業料の返還・学生支援について
Q21:緊急事態宣言下での休校が継続する中で,生徒が学校で授業を受けられないことを受けて保護者から授業料の返還を求められた場合,これに応じなければならないでしょうか。

 授業料は,保護者(学生)と学校との「在学契約」において,学校が授業などの役務を提供することの対価として受領するものです。
 

 したがって,学校が,契約上想定している授業などの教育役務を提供することができていれば,授業料を返還する必要はないことになります。
 

 問題は,「教育役務を提供することができている」と評価できるかどうかです。
 

 通常,緊急事態宣言下にあっても,課題を与えたり,ウェブ授業を開催するなどしてこれまでとは異なるスタイルで学校側が役務を提供しています。現時点では通信環境整備に時間がかかるなどして,従前より授業の遅れが発生している事実はあるかと思いますが,そのことが直ちに「役務提供をしていない」という評価につながるものではありません。授業料は,1年単位,半年単位,学期単位といった一定の期間を区切りとして設定され,提供する役務も設定された当該期間内で提供されることを想定しているからです。この点については文部科学省のQA問75もご参照ください。
https://www.mext.go.jp/content/20200423-mxt_kouhou01-000006270_1.pdf
 

 以上からすると,「通学できていない」とか「授業が遅れている」などといったことが直ちに授業料の返還に結びつくものではない,ということができます。
 

 他方,専門学校・芸術系の学校など,専門的技術の習得を目的としている学校では,レッスンや実習が実施できず,本来の学習課程が実施できない事態が発生していることも考えられます。
 

 この場合は,今後代替的実習すら実施できないなど授業の補完が不可能であるなどの事情があれば,全体のカリキュラムに占める当該実習等の割合に応じて返金するという対応が考えられます。
 

 なお,授業料を返還せずとも,これと実質的に同じ効果をもち,家計が急変した学生を援助する制度が,日本学生支援機構が展開する奨学金制度です。授業料の減免や給付型の奨学金を受け取るなどして経済的に困窮した学生を援助し,従前通りの学習環境を整える一助とすることが可能です。
 
 

Q22:緊急事態宣言下で休校が継続する中で,授業料以外の費用(施設維持費など)について返還を求められた場合,これに応じなければならないでしょうか?

 授業料とは異なり,通学に伴って発生する付随的な費用については,その費用の性質に応じて検討する必要があります。緊急事態宣言下において生徒が学校に通学しないことにより,物理的に費用の対価である役務提供がなされないことになる場合は,費用について返還を検討する必要があります。
 

 例えば,スクールバスの運営に関する費用は,スクールバスの運行が無くなるのであれば,費用を支払う理由がなくなり,返還が必要となります。
 

 また,校外学習のための費用(教材費,旅費)なども,その学習が中止となったのであれば返還を検討する必要があります。
 

 他にも,学校が窓口となって公的機関が実施している検定の申し込みを受け,受験料などを預かっているケースで,検定が中止となってしまった場合も考えられます。この場合も,検定機関に受験料を納付済みの場合は,検定機関から受験料の返還を受け,そのまま生徒側へ返還するという対応になるかと思われます。
 
 

7.理事会・評議員会の開催について
Q23:新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、理事会を書面決議とすることはできますか。

理事会は単に議決を行うための機関ではなく、理事が議題について相互に意見交換を行うことにより学校法人の業務執行の意思決定を行うことが期待されるため、現状においても、書面のみで決議を行うことは認められていません。
もっとも、無理のない範囲で出席可能な理事のみが実際に出席した上で、他の理事は書面による意思表示によって理事会の出席とみなすことは可能とされています。但し、その場合、単なる白紙委任や理事長等への一任とすることは認められていませんので、情報提供の充実を図る等して各理事の意見が反映されるよう留意することが必要です。(令和2年3月11日付文部科学省高等教育局私学部私学行政課「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた学校法人の運営に関する取扱いについて(事務連絡)」参照)。
 
 

Q24:新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、理事会をオンラインで開催することはできますか。

理事会においては、理事が議題について相互に意見交換を行うことにより学校法人の業務執行の意思決定を行うことが求められていますが、テレビ会議等により、出席者が一堂に会するのと同等の相互に十分な議論を行うことができる環境での理事会開催は認められています(令和2年3月11日付文部科学省高等教育局私学部私学行政課「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた学校法人の運営に関する取扱いについて(事務連絡)」参照)。
 
 

Q25:評議員会において、書面決議やオンライン開催とすることはできますか。

Q1ないしQ2の理事会の場合と同様の条件において認められています(令和2年3月11日付文部科学省高等教育局私学部私学行政課「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた学校法人の運営に関する取扱いについて(事務連絡)」参照)。
 
 

Q26:新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、理事会・評議員会の開催にあたり、気を付けることはありますか。

・情報提供の充実を図り実りある議論を可能とする工夫をした上で、Q1ないしQ2で紹介した書面決議ないしオンライン開催により会議場に集まる人数を絞る
・事前に体調の優れない場合の出席を見合わせるようアナウンスする
・通勤ラッシュ時間帯に移動を要する日程設定を避ける
・座席間隔を空けてゆったりとした会場設営とする
・受付での手指の消毒、会議場内でのマスク着用、症状がある方には別室からオンラインで参加してもらう準備
・必要以上に長時間にならないよう進行手順や報告事項は書面配布によるものとする
等、可能な範囲での工夫をすることが考えられます。
 
 

また、当事務所のウェブサイト中、下記リンク先にて、
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