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弁護士沖山延史が「有給休暇取得義務化について」を投稿しました

2019年3月27日

有給休暇取得義務化について
 
平成30年7月6日,「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が制定され,いよいよ今年の4月より実施される施策の一つに「有給休暇の取得義務化」というものがあります。
 
日本は,諸外国との比較では有給休暇の取得率が極めて低く,2018年にある旅行会社が実施したアンケート調査(対象国:日本、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、香港、インド、マレーシア、シンガポール、韓国、タイ、台湾)では,日本の有給休暇取得率は「50%」で最下位であるとの結果も出ているようです(ワースト2位のオーストラリアでも70%)。
 
このような日本における働き方の現状を受けて今回法改正の重要な目玉として制定されたのが,「有給休暇の取得義務化」です。

もともと,労働基準法39条5項は,「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」と定めており,有給休暇の全てを「労働者の請求する時季」に与えることとしています。

今回の改正では,この原則論を維持しつつも,

①年に10日以上有給休暇が付与される労働者に対し,

②付与した日から1年以内に5日間について

③事業者が時季を指定して有給を取得させなければならない

ことになりました(従業員が既に5日以上の有給休暇を請求・取得している場合や,計画年休制度を導入している場合は除きます)。

さらに,事業者は

④時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存し,

⑤時季指定に関する規定を就業規則等に定める

という対応も必要となります。

また,この「有給休暇取得義務」に違反した場合は,30万円以下の罰金が科される可能性があります(労基法120条)。
 
では,この有給休暇取得義務は,どのように履行すれば良いのでしょうか?

実は,法律上,事業者がどのようなタイミングで時季指定を行うかについてはルールを定めていません。

したがって,事業者からの時季指定は、基準日から1年以内の期間内に、適時に行うことになります。

しかし,もともと労働者側で5日以上計画的に取得したいという希望があるにもかかわらず,事業者がこれを無視して時季指定を行うことはできません(事業者は労働者の意見を聴取することと,出来る限り労働者の希望に沿うよう努めなければならないとされています)。

そこで,厚生労働省のリーフレットなどでは,以下の方法が紹介されています。

・基準日から一定期間が経過したタイミング(半年後など)で年次有給休暇の請求・取得日数が5日未満となっている労働者に対して、使用者から時季指定をする。

・過去の実績を見て年次有給休暇の取得日数が著しく少ない労働者に対しては、労働者が年間を通じて計画的に年次有給休暇を取得できるよう基準日に使用者から時季指定をする

つまり,基準日から1年以内に5日以上の有給休暇取得が実現できない可能性が類型的に高い従業員に対して働きかけを行うことが典型的な方法として想定されています。

このあたりは,事業者内でルールを作っておくと良いかもしれません。

なお,厚生労働省のリーフレットでは,有給休暇の確実な取得の方法として,「年次有給休暇取得計画表」を作成する方法も紹介されています。これは,年度別や四半期別、月別などの期間で個人ごとに予定している年次有給休暇の取得時期を一覧化したもので,他の従業員の計画も情報共有することで,休暇の調整がしやすくなるというメリットがあります。

もちろん,この計画表通りに有給休暇が取得できない場合もあるでしょうから,その場合は事業者が取得状況をチェックして,消化率の悪い従業員に対しては時季指定を行なっていくことになるかと思われます。
 
2019年4月からの制度導入に向け,各事業者対応に追われている事かと思いますが,厚労省のリーフレットなども参考に万全の体制を整えて下さい。

【参考】
厚生労働省リーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(2019年4月施行)

(文責 弁護士 沖山延史)

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